2011年01月29日

社会不安障害のまとめ(SAD10)

 ご無沙汰しております。筆無精しておりました。書こうと思いながら、月日が流れて、あっという間に1年半!自分でも驚いています。ずいぶん重たい筆になっていました (^^;)。この間、いろんな変化があったことと思います。私の髭にも白髪が増えてきました。

第一回 社会不安障害のあらまし
第二回 不安の性質と「慣れ」について
第三回 社会不安障害の成り立ち・森田療法
第四回 社会不安障害の自然軽快・治り方・認知行動療法について
第五回 社会不安障害の治療の進め方について
第六回 社会不安障害の治療の進め方について2
第七回 社会不安障害の治療の落とし穴
第八回 緊張・不安と成績との話
第九回 不安を強めるもの・予防対策

として、これまで書いてきました。

SAD治療のまとめ

 まず、病気の回復で、一番大切なものは、「自尊心self-esteem」ではないでしょうか。自己肯定感とも呼ばれます。それは、『病気や障がいなどの困難の中にあって、「それでも自分の生には意味がある」と、積極的に思えるようになる、そんな立ち向かう心のエネルギーのこと』、を示していると思います。元来の自尊心レベルの問題もあるでしょうが、病気、それ自体が自尊感情を傷つけます。 「自分にも、現在の問題を受け入れて解決する力がある。求めれば、支え協力してくれる人も集まる」と思えだした人は、ひとりでに治っていくようにさえ思います。心を開き、問題をオープンにして、主体的にあれるよう願っております。
一方で、ある心理学者は、自尊心 = 成功(分子) / 願望(分母)という公式を提唱しています。つまり、要求水準(願望)が高すぎることも、結果として自尊心の低下につながるということです。「足るをしる」という言葉のような解釈もあるでしょうし、ステップバイステップとして実現可能なところへ、おりあいをつける、という意味に受け取ってもよいと思います。

 次に、当院ではSAD治療での原則を次のように提唱しています。
1. とびこむ
2. 集中
3. ひらきなおる
4. うまくやろうとしない
5. Skillをみがく
6. Post-mortemに気をつけて!

と挙げています。

1.「泳げるようになるための一番の方法は水に飛び込むことだ」との言葉の通りです。不安場面にチャレンジしてみなければ、回復はありえません。何とか乗り越えられそうかな!?というところからやっていくことがコツで、なるべく主体的・積極的参加であることが重要です。受動的であれば、結局のところ苦痛を堪え忍ぶといった回避がおこりやすいためです。そのためには、好奇心をはたらかせ、心のアクセルをふみ、心のブレーキを外すことが必要になります。やりおえたあとに、悪いシーンばかりを寄せ集めて、我が生涯の汚点のように記憶をゆがめてしまうことが、Post-mortem(あとでくよくよ考える)という現象です。そこに気をつけて、やりおえたあとは、自らの勇気をたたえ、プラスの意味を見逃さないようにひろいあげ、次につながる記憶としてとどめましょう!

2.緊張場面では、まわりの目が気になります。しいては、まわりの目になったつもりで自分をみて、まわりの人たちが自分のことをどう思っているか想像を働かせてしまいます。手が震える、汗がでる、など自分の身体症状にもかなり神経質になり気づきますし、それを隠そうと力が入ったりもします。そのようなことに気をとられながら、スピーチをしたり書字をしたりしますので、気が散って頭は真っ白になってしまうのは当然の結果です。自分のやろうとしていることだけに集中できれば、極端に言うなら、1人だろうが大勢の中だろうが同じ、といった心理状態が理想になります。症状をあるがままにして、やっていくということですが、ある程度の「はじ」を覚悟しなくてはなりません。

3.恥をかく覚悟というのはとても大切です。人間や世の中に完璧がないことを受け入れ、ミスや欠点はある程度仕方ないとみる見方です。当たり前のことですが、たとえはじをかいたとしても、死ぬことはありません。ひらきなおる、覚悟を決める、ことと同じで、いいかえるなら「最悪の事態を受け入れる覚悟をする」ということになります。そうすることではじめて、挑戦する勇気がでてきます。失敗をおそれていては、何事にもチャレンジはできません。ある程度のマイナスを覚悟することで、プラスに目を転じることができるということでもあります。

「剣の下こそ地獄なれ、一歩進め、そこは極楽」 宮本武蔵 

4.つまり、不安へ立ち向かうときの心構えは、挑戦者になることです。その反対に完璧主義があります。うまくやりたい、との気持ちに欲がでれば、完璧主義 ≒ マイナス思考となってしまいます。たった1点のミスが怖くなる、心境です。スポーツ選手が、「絶対に金メダルをとります」とか「絶対に負けられない」と表明したときに、えてして力を発揮できずに負けてしまう印象がないでしょうか。負けることが怖くなり、あまりよくない緊張がはしるように感じます。逆に、「金メダルをめざして頑張りたい」とか「是非にも勝ちたい」などの表明だと、わくわくする緊張感になり、応援する側も、勝ち負けをこえて楽しみになるように思います。うまくやろうとせず、精一杯やる、一所懸命にやるという感じです。

注)「自分はうまい」、「完璧だ」、「うまい人になったつもりで」などと自己暗示をかけて集中する方法もありますので、場面や人によっては使い分けをします。

5.緊張をのりこえるだけで、全てがうまくできるのではありません。たとえば、ピアノの発表会のことを考えてみて下さい。緊張しなかったらうまくひける?そうではありません。日頃のピアノの練習なくして、うまく弾くことはありえません(注)私はピアノはあまりうまくありません(^^;)。スピーチや、会話、社交などにも、技術(Skill)の問題が多く含まれています。日頃から関心をもって話題を集めておくことや、間の取り方、目線のやり方、表情など演出も必要です。もとより社交を好きで参加していた人たちにとっては、その場を通じてそれらのスキルも増していることと思いますが、回避してきた方の場合、それらを磨くこともまた大切になります。自信は周到な準備から生まれるものです。

「千日の稽古を鍛とし、万日の稽古を錬とす」 宮本武蔵

6.そして、おわったことをくよくよ考えず、失敗を生かす気持ちで精進されていかれることを願っております。

「過去と他人は変えられない。自分と未来はかえられる。」 おしまい
posted by かなめクリニック at 15:59| 精神科・心療内科